地に足
身体を通して公共的な場を立ち上げ、そこで生成する「存在への肯定」を観察・記録する、フィールドワーク型パフォーマンスプロジェクト。
わたしたちについて
私たちは普段、自分が「何者であるか」を証明しながら生きている。職業・肩書き・実績といった「機能」を通じて他者とつながり、その機能によって社会の中に居場所を確保している。
しかし、それらの機能をすべて取り去ったとき、「ただの自分」はどこにいられるのか。定年退職、病気、子育ての終了など、何らかの理由で社会的役割を失ったとき、人は自分の存在の拠り所を見失うことがある。これは個人の問題ではなく、人間の価値が「機能」に結びつけられている社会の裏返しである。AIの台頭によって、その問いはこれまでにない切実さを帯びている。
私たちはその答えが「存在への肯定」にあると考えている。何も生産せず、何の役にも立たないが、ただそこにいることが許されること。それこそが人間にとって本質的な領域であり、その肯定は人間同士だからこそ可能ではないか。
「地に足」は、この「存在への肯定」を社会やまちの中に出現させる試みである。
「公園する」
「公園」には、年齢も職業も目的もばらばらな人々が、互いを邪魔せず、序列も義務もなく、同じ場にそれぞれのやり方で存在している。会社には上下関係があり、カフェでは注文する義務があり、図書館では静かにすることが求められる。多くの場所は何らかのルールによって人の振る舞いを規定している。公園は、ほとんど何も規定しない。
何をしてもいいし、何もしなくてもいい。それでいて、そこには微かなつながりが生まれる。見知らぬ人と天気の話をしたり、走り回る子どもを一緒に眺めて微笑み合ったりする瞬間に、人は「機能」を介さずに他者と存在を共有している。
つまり公園とは、場所の名前だけではなく、現象の名前である。役割も序列も持たない人々が、同じ場にいてただ存在を認め合えるという現象そのものが「公園」である。物理的な公園があってもこの現象が現れないこともあれば、公園と呼ばれない場所でもこの現象が生まれることもある。
公園とは名詞ではなく、動詞なのではないか。「公園がある」のではなく、「公園する」と表現することで、この現象を的確に捉えられるのではないか。
これまでの活動
代表・上水優輝は2024年から、公園にレジャーシートを広げてただそこにいるという「公園活動」を継続してきた。実施回数 135回/参加者延べ 300名(2026年3月時点)。レジャーシートは誰でも参加することができ、特定の目的を持たない、開かれた場である。
初めて会った人同士が職業も肩書きも知らないまま同じシートに座って話をする。ある日は初対面の参加者同士が仕事の悩みや病気のことを語り合い、別の日には恋愛や家庭の話で盛り上がる。参加者がお菓子を持参して即席のピクニックになることもある。誰かが評価したり助言したりするわけでもなく、ただ同じ場で時間を共に過ごしている。
用意されたプログラムも、スケジュールも、学びも、ゴールもない。にもかかわらず、帰り際に「来てよかった」と言う人がいる。何も起きていないのに、何かが満たされている。
18:17 食事が落ち着くと、またみんな焚き火に見入って沈黙がちになった。「いやぁ、本当に良い時間ですね。今日は来れてよかったです」I さんが感慨深げに言った。 18:59 I さんが「そろそろ帰ります」と言って席を立った。病気の後遺症で若干の半身麻痺があり、ゆっくりとした足取りで歩き始めた。M さんがランタンを手に取り途中まで見送りに付き添った。I さんが50メートルぐらい向こうから「月がきれいですよ!」とこちらに向かって声をかけてくれた。焚き火エリアで座っていた私と Y さんと K さんは立ちあがって月がよく見える角度まで歩いた。とても大きくて丸い月が暗闇に強い光を放って浮かんでいた。
メンバー
上水優輝(うえみず ゆうき)
代表・実践者
「存在としての公園」をコンセプトに活動。社会的肩書きを脱ぎ「ただの人」として在ることを実践。2024年より公園にレジャーシートを敷いて「ただ居る」活動を継続中。長夜の芸術祭(2024年12月、滋賀県長浜市)参加。
水上優(みずかみ ゆう)
人類学実践者・リサーチャー
合同会社メッシュワーク共同創業者。国際基督教大学・京都大学大学院にて文化人類学を学ぶ。修士(人間・環境学)。鳥公園「昼の街を歩く」ドラマトゥルク、NEO表現まつりZワークショップ主催など、人類学的視点を芸術プロジェクトに取り入れる実践を続けている。共訳書『ポストヒューマニズムデザイン』(ロン・ワッカリー著)。
山里真紀子(やまざと まきこ)
制作コーディネーター
NPO法人芸術公社、一般社団法人Q所属。アートプロジェクト「シアターコモンズ」や、演劇ユニット「Q」(市原佐都子主宰)の制作コーディネート等を行っている。
実績
- 公園活動(2024年〜継続)/実施135回・参加者延べ300名
- 長夜の芸術祭(2024年12月、滋賀県長浜市)に「現象」名義で参加。レジャーシートを敷いて市民と交流する公園活動、映像展示を実施
リンク
地に足(ちにあし)/2025年11月結成